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相続財産は実家だけ。それでも母と子で半分ずつにしますか?

相続した不動産の登記を見ていると、よく見かける形があります。

「母 2分の1・息子 2分の1」

あるいは、

「母 2分の1・子ども2人がそれぞれ4分の1」

といった親子の共有名義です。

相続財産がたくさんあり、相続税対策として計算した結果、このような分け方をしているのであれば理解できます。

しかし、実際にご相談を受けていると、

「相続財産といっても、ほとんど実家の土地と建物だけ」

というご家庭でも、実家を親子で共有しているケースをよく見かけます。

なぜでしょうか。

おそらく、

「法定相続分が母2分の1、子2分の1だから、そのとおりに分けた」

というケースも多いのではないでしょうか。

しかし、不動産については、

「法定相続分どおりだから」という理由だけで共有名義にすることは、あまりおすすめできません。

法定相続分どおりに不動産を共有する必要はありません

たとえば、お父様が亡くなり、相続財産が、

自宅の土地・建物と、多少の預貯金

だったとします。

相続人はお母様と息子さん1人。

法定相続分はそれぞれ2分の1です。

だからといって、自宅まで必ず、

母1/2・息子1/2

にしなければならないわけではありません。

相続人全員で遺産分割協議を行い、

自宅は母が単独で相続する

という分け方もできます。

もちろん、ご家庭ごとの事情がありますから、どちらが正解とは一概には言えません。

ただ、私は相続不動産を扱う立場として、

「共有にする前に、この家を将来どうするのかまで考えてください」

とお伝えしたいのです。

母と子で半分ずつにすると、売却には2人の意思が必要になります

母1/2・息子1/2で相続すれば、その家は2人の共有財産です。

将来、

「母が施設に入ることになったので実家を売ろう」

となった場合、原則として2人の意思が揃わなければ不動産全体を売却できません。

お母様がお元気であれば、それほど問題にはならないでしょう。

問題は、お母様が高齢になり、認知症などによって売却について十分に判断できなくなった場合です。

息子さんが、

「もう誰も住まないから売却しよう」

と思っても、お母様の持分まで息子さんの判断だけで売却することはできません。

状況によっては成年後見制度を利用することになり、居住用不動産の処分について家庭裁判所の許可が必要になる場合もあります。

「介護施設の費用に充てたいから実家を売りたい」

と思ったときに、簡単には売却できない可能性があるのです。

お母様が住んでいた家なら、売却時の税金も考えてください

もう一つ考えていただきたいのが、売却したときの税金です。

お父様が亡くなった後もお母様がその家に住み続け、その後売却する場合、一定の要件を満たせば、マイホームを売却した際の3,000万円特別控除を利用できる可能性があります。

ところが、別に自宅を持って暮らしている息子さんが実家の2分の1を相続したからといって、その持分が息子さん自身の「マイホーム」になるわけではありません。

つまり、

近い将来売却する可能性がある実家を、何となく親子で半分ずつ相続することが、税金面でも本当に有利なのか

は、一度考えてみる必要があります。

※3,000万円特別控除をはじめ、税制上の特例には適用要件があります。具体的な税務判断については税理士等への確認が必要です。

「二次相続対策」というメリットもありますが……

親子で共有する理由として、

「母にすべて相続させると、母が亡くなったときにもう一度相続することになる」

という考え方もあります。

確かに、相続財産が多く相続税が発生するご家庭では、一次相続だけでなく、お母様が亡くなったときの二次相続まで計算して財産を分けることは非常に重要です。

しかし、

相続財産はほぼ自宅の土地と建物だけで、相続税の心配もほとんどない

というご家庭まで、同じ考え方をする必要があるのでしょうか。

相続税を抑える必要性がほとんどないのであれば、それよりも、

誰が住むのか
誰が管理するのか
将来誰が売却を決めるのか
認知症になった場合はどうするのか

を優先して考えた方がよいケースもあります。

共有名義は、次の相続でもっと複雑になることがあります

現在は、

母1/2 + 息子1/2

という単純な共有でも、それで終わるとは限りません。

お母様が亡くなれば、お母様の持分について再び相続が発生します。

反対に、息子さんが先に亡くなれば、息子さんの持分がその相続人へ引き継がれることもあります。

こうして相続を繰り返すうちに、

共有者が2人から3人、4人、5人……

と増えていくことがあります。

そして共有者が増えるほど、売却するときに全員の意思をまとめることは難しくなっていきます。

「今は親子2人だから大丈夫」

ではなく、

「次の相続が起きたら、この不動産はどうなるのか」

まで考えることが大切です。

実家しかないからこそ、安易に共有にしない

相続財産がたくさんあるご家庭なら、

「この不動産は母、こちらの不動産は長男、預貯金は次男」

という分け方もできます。

難しいのは、

「財産らしい財産は実家だけ」

というご家庭です。

公平に分けようとすると、

「それなら実家を半分ずつにしよう」

となりやすいからです。

でも、不動産は預貯金とは違います。

1,000万円の預金を500万円ずつ分けることと、1,000万円の家を2分の1ずつ共有することは、同じではありません。

不動産を共有すれば、その後の管理、修繕、賃貸、売却、そして次の相続まで、共有者同士の関係が続いていきます。

だからこそ、

「公平に半分ずつ」だけで決めるのではなく、「この家を将来どうするのか」から逆算して相続を考えていただきたい

と思います。

相続登記をする前に、一度「その後」を考えてみてください

相続した実家について、

母がこのまま住み続けるのか。

いずれ施設へ入る可能性があるのか。

そのとき実家を売却して施設費用に充てるのか。

売却した場合の税金はどうなるのか。

次の相続が起きたとき、誰が所有者になるのか。

ここまで考えると、

「とりあえず法定相続分どおり半分ずつ」

が、本当にそのご家族にとって一番よい方法なのかが見えてきます。

株式会社下鴨地所では、相続診断士・宅地建物取引士として、相続不動産や共有名義の不動産についてご相談を承っています。

「相続財産は実家くらいしかない」

そんなご家庭こそ、実家を誰の名義にするのかを慎重に考えていただきたいと思います。

まだ売却を決めていなくても構いません。

相続登記をする前に、「この家をこの先どうしたいのか」を一緒に整理するところからご相談ください。

※本記事は一般的な不動産・相続に関する情報提供を目的としています。具体的な相続税・譲渡所得税等については税理士、成年後見その他の法律上の判断については弁護士・司法書士等の専門家への確認が必要です。

2026年10月27日

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